IRIDOME Guide
コーヒー豆の焙煎・販売を始める方法
自家焙煎コーヒー豆の販売を始めるために必要なことを整理したハブ記事。営業届出・設備・生豆仕入れ・原価・価格・販路・販売後の運用管理まで俯瞰します。
公開日: 2026-08-21 最終更新日: 2026-08-21
自家焙煎のコーヒー豆を販売したい——そう考え始めたとき、何から手を付ければいいのか分からないことが多いはずです。
この記事では、焙煎した豆を販売するまでに必要なことを、設備・手続き・仕入れ・価格・販路・運営管理の順に整理します。趣味の手網焙煎ではなく、販売を前提とした焙煎所の立ち上げを対象にしています。
販売形態によって何が変わるか
一口に「自家焙煎豆の販売」といっても、始め方はさまざまです。
| 形態 | 特徴 |
|---|---|
| EC(ネット販売) | 店舗を持たずに始められる |
| 焙煎所のみ(店舗なし) | 製造に集中し、卸・ECを中心に販売する |
| 週末・マルシェ販売 | 小さく始めて需要を確かめやすい |
| カフェ併設 | 飲食と物販を組み合わせる |
| 卸・業務販売 | カフェや飲食店へ継続的に納品する |
どの形態を選ぶかによって、必要な手続き・設備・在庫量・価格設定が変わります。まずは自分がどの形態で始めるかを決めることで、確認すべきことを絞り込めます。
必要な届出・表示を確認する
食品に関する手続きは、製造するものや営業形態によって変わります。ここでは焙煎したコーヒー豆を製造・販売する場合の基本的な考え方を整理します。
注意: 以下は2026年8月時点の制度をもとにした一般的な整理です。実際に始める前に、営業所を管轄する保健所や自治体、消費者庁などの最新情報を確認してください。
コーヒー豆の焙煎は「営業届出」の対象
食品衛生法の営業規制では、コーヒー生豆を焙煎・粉砕して製造・加工する営業は、「コーヒー製造・加工業(飲料の製造を除く。)」として営業届出の対象に分類されています。
これは「菓子製造業」の営業許可とは別の制度です。焙煎豆の製造だけでなく、カフェ営業や別の食品製造などを併設する場合は、別途営業許可等が必要になることがあります。
営業を始める前に、所在地を管轄する保健所へ営業内容を伝え、必要な届出・許可を確認しておくと安心です。
営業届出の対象施設でも、HACCPに沿った衛生管理と食品衛生責任者の選任が必要です。資格要件や講習、届出方法は自治体によって案内が異なるため、営業開始前に所在地を管轄する保健所の最新情報を確認してください。
食品表示
容器包装に入れて一般消費者向けに販売する焙煎豆では、食品表示法・食品表示基準に沿った表示を確認する必要があります。
表示事項は商品の形態や事業者の条件などによって変わるため、「この項目だけあればよい」と決め打ちせず、最新の基準を確認します。例えば、次のような事項が関係します。
- 名称
- 原材料名
- 内容量
- 賞味期限などの期限表示
- 保存方法
- 食品関連事業者の氏名または名称・住所
- 製造所に関する表示
- 原料原産地に関する表示
栄養成分表示は一般用加工食品では原則として必要ですが、コーヒー豆のように栄養の供給源としての寄与が小さい食品など、一定の条件では省略できる場合があります。
確認先: 消費者庁 食品表示 / 栄養成分表示について
EC販売では特定商取引法も確認する
インターネットで注文を受けて販売する場合は、特定商取引法の通信販売に関する表示も確認します。
販売価格、送料、支払方法、商品の引渡時期、返品・契約解除に関する事項、事業者情報など、表示が必要になる事項があります。利用するECサービスに入力欄が用意されていても、最終的な表示内容は自分の販売条件に合わせて確認しておきます。
確認先: 消費者庁 特定商取引法ガイド「通信販売」
焙煎設備の選び方
販売を始める場合、焙煎機の容量を「月○kgなら○kg機」と固定的に決めるのではなく、必要な生産量と、実際に焙煎へ使える時間から逆算して考えます。
例えば、次の順番です。
- 月間で販売したい焙煎豆量を見積もる
- 歩留まりを考慮して必要な生豆量を見積もる
- 月の稼働日数を決める
- 1日に何バッチ焙煎できるかを考える
- 余裕を持って回せる焙煎機容量を検討する
同じ月30kgでも、「週末だけ焙煎する」のか「平日に毎日焙煎できる」のかで、必要な容量は変わります。焙煎機本体の価格だけでなく、排気設備、設置工事、電気・ガス、メンテナンス、修理体制まで含めて比較すると判断しやすくなります。
排気・設置条件も確認する
焙煎ではチャフ、煙、熱、においが発生します。物件や焙煎機によっては、排気経路・消防・ガス設備・近隣への影響などの確認が必要です。
設備を購入してから設置できないことが分かると負担が大きいため、物件契約や焙煎機購入の前に、メーカー・施工業者・物件管理者・必要に応じて自治体や消防などへ確認しておく方が安全です。
生豆の仕入れ
生豆は主に次のような経路で仕入れられます。
- 商社・インポーター:まとまった単位での取引から、小口対応まで事業者によって条件が異なる
- 小ロット対応の生豆販売事業者:数kg程度から試しやすい場合がある
- 生産者・輸出業者との直接取引:品質や関係性を深く作れる一方、取引量・物流・輸入実務などのハードルが上がる
最初から品種を増やしすぎると、資金が在庫に固定され、管理するロットも増えます。販売したい商品構成から必要量を考え、仕入条件と在庫リスクのバランスを取ることが大切です。
生豆在庫の管理
仕入れが増えると、ロットごとの単価・入荷日・残量を追う必要が出てきます。
同じ豆でも仕入れ時期・単価が異なるため、「どのロットを使って焙煎したか」が原価計算のベースになります。詳しくはコーヒーロースターの生豆在庫管理を参照してください。
原価と価格の設定
材料原価の計算
焙煎後の販売可能重量を基準に原価を出します。生豆をそのまま100g換算しても、焙煎中の目減りがあるため実際の材料原価とはずれます。
計算の考え方は焙煎後の目減りまで考えたコーヒー豆の原価計算で整理しています。
歩留まりの把握
焙煎度・生豆・焙煎機・プロファイルなどによって重量減少率は変わります。一般的な数字だけで原価を決めるより、自分の焙煎ごとに投入重量と焙煎後重量を記録し、実測した歩留まりを使う方が実態に近づきます。
コーヒー焙煎の歩留まりとは?も参照してください。
販売価格の考え方
材料原価だけでなく、包材費、決済・EC手数料、配送費、人件費、エネルギー費、設備費など、事業を続けるために必要なコストを把握して価格を検討します。
まず材料原価や販売時の変動費から価格を試算したい場合は、コーヒー豆の価格計算ツールを使えます。
焙煎記録をつける
販売を継続するなら、「どんな条件で焙煎し、結果がどうだったか」を後から比較できる記録が役立ちます。
最低限の例としては、次のような項目です。
- 焙煎日
- 使用した生豆・仕入れロット
- 投入量・焙煎後重量
- 焙煎時間や主要イベント
- 焙煎プロファイル
- 品質メモ・評価
- 次回変えたいこと
全部を最初から細かく記録する必要はありません。後から「前回との違い」を確認できる範囲から始めるのが現実的です。
Artisanなどの焙煎ソフトで記録したデータをどう管理するかは、Artisanの焙煎データをクラウドで管理する方法でも整理しています。
販売チャネルの選択
| チャネル | 特徴 |
|---|---|
| 自社EC(BASE、Shopifyなど) | 商品ページや販売導線を自分で設計しやすい |
| モール | プラットフォーム内の集客を期待できる一方、手数料や出店条件を確認する必要がある |
| SNSからECへ誘導 | 発信と販売をつなげられるが、継続的な集客が必要 |
| マルシェ・イベント | 対面で説明や試飲ができ、反応を直接確認しやすい |
| 卸・業務販売 | 継続受注につながる可能性がある一方、納期・価格・供給量の安定が重要 |
最初から複数チャネルを広げすぎると管理が複雑になります。まず1〜2チャネルで販売を試し、反応を見ながら広げる方法もあります。
販売開始後の運用
販売が始まると、「焙煎する」以外の管理が少しずつ増えていきます。
- 生豆仕入れ: 現在庫と消費ペースから次回発注を考える
- 焙煎記録: どの生豆・ロットを、どの条件で焙煎したか残す
- 歩留まり: 投入量と販売可能重量の差を把握する
- 原価管理: 仕入単価と歩留まりの変化を商品原価へ反映する
- 棚卸: 帳簿上の在庫と実在庫の差を確認する
最初はExcelやスプレッドシートでも十分に始められます。ただ、仕入れロット・焙煎回数・商品数が増えると、「同じ情報を複数の表へ転記する」「どの数字が最新か分からない」といった負担が出やすくなります。
販売目標から必要な生豆量を見積もりたい場合は、生豆必要量計算ツールも使えます。
関連記事・ツール
| 記事・ツール | 内容 |
|---|---|
| 焙煎後の目減りまで考えたコーヒー豆の原価計算 | 材料原価の計算方法 |
| コーヒー焙煎の歩留まりとは? | 重量減少率と歩留まりの違い |
| コーヒーロースターの生豆在庫管理 | ロット管理・履歴管理の基本 |
| 焙煎歩留まり・原価計算ツール | 投入量・単価から原価を計算 |
| コーヒー豆の価格計算ツール | 原価と条件から販売価格を試算 |
| 生豆必要量計算ツール | 販売目標から必要量を逆算 |
IRIDOMEについて
IRIDOMEは、コーヒーロースター向けの焙煎・在庫・原価管理ツールです。
販売を続けていくと、焙煎記録・生豆ロット・在庫・歩留まり・原価を継続して扱う場面が増えていきます。Excelで十分な間は、Excelやスプレッドシートで管理する方法でも構いません。
次のような状態になってきたときは、管理方法を見直すタイミングのひとつです。
- 仕入れロットが増え、どのロットをいつ使ったか追いづらい
- 焙煎するたびに在庫表・原価表を別々に更新している
- 歩留まりの変化が原価にどう影響するか毎回計算している
- 焙煎記録と在庫記録が分かれ、後から集計するのに時間がかかる
IRIDOMEでは、焙煎記録、生豆ロット、在庫、歩留まり、原価をつなげて確認できるようにすることで、こうした継続管理を扱いやすくすることを目指しています。