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生豆在庫の管理方法|Excelでどこまで管理すればいい?
生豆在庫が頭の中だけでは追えなくなってきたロースター向けに、Excel・スプレッドシートでの管理方法を解説。仕入れロット、焙煎・棚卸の増減履歴、管理を増やすタイミングを具体例付きで整理します。
公開日: 2026-08-19 最終更新日: 2026-08-24
「この生豆、あと何kgあったっけ?」
焙煎しようとして袋を持ち上げ、残量を確認する。
最初のころは、それで十分でした。
生豆は数種類。仕入れた袋も一つずつ。どの豆がどれくらい残っているかは、だいたい頭に入っています。
Excelを作るほどでもないし、まして在庫管理システムなんて必要ありません。
ところが、焙煎を続けていると少しずつ状況が変わってきます。
前回仕入れたエチオピアが少し残っているところに、新しいエチオピアが届く。
前回は1,900円/kgだったのに、今回は2,150円/kg。
昨日は500g焙煎した。その前には、サンプル用に少し使った気もする。
袋を見ると、まだそれなりに入っている。
「……結局、今どれだけ残っているんだろう?」
生豆の在庫管理を考え始めるのは、こういうタイミングではないでしょうか。
在庫管理が必要になるかどうかは、ロースターの規模だけでは決まりません。
豆の種類が増えた。同じ豆を追加で仕入れるようになった。仕入価格が変わった。焙煎する回数が増えた。誰かと一緒に作業するようになった。
こうした変化が少しずつ重なると、それまで頭の中で管理できていたものが追えなくなってきます。
だからといって、いきなり専用の在庫管理システムを導入する必要もありません。
生豆が数種類なら、まずは「豆名と残量」だけでも十分です。
そこから必要になったタイミングで、次の情報を残せるようにしていけばいい。
「何を仕入れたか」「どのロットを使ったか」「なぜ在庫が減ったか」
この記事では、生豆の在庫管理が少し必要になってきたロースターに向けて、ExcelやGoogleスプレッドシートから始められる管理方法を、実際の運用が複雑になっていく順番に沿って整理します。
まずは「豆名と残量」だけでもいい
生豆の種類が少なく、同じ豆の古い袋と新しい袋が重ならないうちは、次のような表でも十分です。
エチオピア 5kg
ブラジル 8kg
グアテマラ 3kg
これで「何を仕入れるべきか」「今日使いたい豆が足りるか」を判断できているなら、無理に項目を増やす必要はありません。
在庫管理は、細かい記録を作ることではなく、今の現場で必要な判断ができることが目的です。
では、いつから管理を増やせばいい?
次のうち、今の現場に当てはまるものがあるか確認してみてください。
- 同じ豆を追加で仕入れるようになった
- 古い袋と新しい袋が同時に残る
- 仕入価格が変わる
- どのロットを焙煎したか分からなくなる
- 焙煎回数が増えた
- サンプルや廃棄など、焙煎以外でも豆が減る
- Excelの数字と実際の残量が合わない
- 他の人も生豆を使う
2〜3個当てはまるなら、豆ごとの残量だけを記録する状態から、一段進めてもよいかもしれません。
全部を一度に管理する必要はありません。まず、今分からなくなっている情報だけを記録できるようにします。
生豆在庫は3段階で管理すると考えやすい
生豆在庫の管理は、次の3段階に分けると考えやすくなります。
Level 1 — 豆ごとの残量
「何が何kgあるか」を管理します。
同じ豆の仕入れが重ならず、残量だけで仕入判断できる状態に向いています。
Level 2 — 仕入れロット
「どの仕入れ分が何kgあるか」を管理します。
同じ豆を追加で仕入れたり、仕入れごとに単価が変わったりする状態に向いています。
Level 3 — 在庫の増減履歴
「なぜその残量になったか」を管理します。
入荷・焙煎・サンプル・廃棄・棚卸を履歴として残したい状態に向いています。
全員がLevel 3まで管理する必要はありません。今の運用で追えなくなってきたところまで進めれば十分です。
同じ「エチオピア」でも、同じ在庫とは限らない
冒頭のように、前回仕入れたエチオピアが残っているところへ、新しいエチオピアが届いたとします。
| ロット | 入荷日 | 単価 | 入荷量 | 残量 |
|---|---|---|---|---|
| ETH-001 | 4/10 | 1,900円/kg | 5kg | 1.2kg |
| ETH-002 | 7/18 | 2,150円/kg | 5kg | 5kg |
これを単純にまとめると、次のようになります。
エチオピア 6.2kg
総量は分かりますが、1,900円/kgと2,150円/kgのどちらを焙煎に使ったのか、古い仕入れ分がどれだけ残っているのかは分かりません。
そこで、「生豆」と「仕入れロット」を分けます。
- 生豆:エチオピア イルガチェフェという「何の豆か」
- 仕入れロット:4月10日入荷分、7月18日入荷分という「どの仕入れか」
同じ生豆でも、仕入日・仕入先・単価・入荷量が違えば、別のロットとして記録します。
Excelで始めるなら3つの表を作る
Level 2以降をExcelやGoogleスプレッドシートで管理するなら、次の3つの表を作ります。
列名は日本語でも構いません。ここでは表同士のつながりが分かりやすいように、IDや増減量の列名を英字にしています。
Sheet 1 — 生豆マスター
「何の豆か」を管理する表です。 同じ豆を繰り返し仕入れても変わりにくい情報をまとめます。
| green_id | 生豆名 | 生産国 | 精製方法 |
|---|---|---|---|
| ETH-YIRGA | エチオピア イルガチェフェ | Ethiopia | Natural |
| BRA-CERRADO | ブラジル セラード | Brazil | Natural |
Sheet 2 — 仕入れロット
「いつ・どこから・いくらで仕入れたか」を管理する表です。 入荷のたびに1行追加します。
| lot_id | green_id | 仕入日 | 仕入先 | 仕入単価 | 仕入量 |
|---|---|---|---|---|---|
| ETH-001 | ETH-YIRGA | 2026-04-10 | ○○商社 | 1900円/kg | 5000g |
| ETH-002 | ETH-YIRGA | 2026-07-18 | ○○商社 | 2150円/kg | 5000g |
Sheet 3 — 在庫増減履歴
「いつ・なぜ増減したか」を管理する表です。 在庫が動くたびに1行追加します。
| 日時 | lot_id | 種別 | quantity_delta_g | 関連記録 |
|---|---|---|---|---|
| 2026-07-18 | ETH-002 | purchase | +5000 | Purchase #12 |
| 2026-07-20 | ETH-002 | roast | -500 | Roast #101 |
| 2026-07-25 | ETH-002 | sample | -30 | Sample |
この3つの表があれば、「何を、いつ、どこから、いくらで仕入れ、なぜ在庫が増減したか」を追えるようになります。
「現在庫」を直接書き換えない
Excelでよく起こるのが、現在庫のセルをその都度書き換える運用です。
5kg
↓
500g焙煎
↓
4.5kgに書き換える
現在の残量は分かりますが、後から「なぜ4.5kgになったのか」を確認できません。
そこで、現在庫そのものを書き換えるのではなく、増減を1件ずつ残します。
+5,000g 入荷
-500g 焙煎
-30g サンプル
-20g 棚卸調整
この場合の現在庫は、増減を合計した結果です。
5,000 - 500 - 30 - 20 = 4,450g
現在庫 = 入荷・焙煎・サンプル・棚卸などの増減の結果
という形にすれば、残量だけでなく「なぜ減ったか」も分かります。
増減の種類は、最初から細かくしすぎなくても構いません。
purchase 入荷
roast 焙煎使用
sample サンプル使用
disposal 廃棄
stocktake 棚卸調整
other その他
焙煎記録とつなげると、在庫管理がもっと役立つ
在庫増減履歴の「焙煎」を、実際の焙煎記録とつなげます。
Roast #101
使用ロット:ETH-002
投入量:500g
焙煎後重量:418g
この記録があれば、どの仕入れロットを500g使ったのかが分かり、そのロットの在庫を減らせます。
さらに、仕入単価と投入量から原価を計算し、投入量と焙煎後重量から歩留まりを確認できます。
仕入れ → 在庫 → 焙煎 → 歩留まり → 原価
という流れが一つにつながります。
詳しい計算方法は、コーヒー焙煎の歩留まりと焙煎豆100gの原価計算で整理しています。焙煎記録に残す項目は焙煎記録には何を残す?も参考にしてください。
「Excelの数字と袋の中身が合わない」は普通に起こる
月末に袋を量ったら、Excelの残量と実際の重さが違っていた。
Excel 3,950g
実際 3,920g
これは珍しいことではありません。
- 計量誤差
- こぼれ
- サンプル使用
- 廃棄
- 記録漏れ
といった理由で、帳簿上の在庫と実在庫は少しずつずれます。
差は次の式で確認します。
棚卸差異 = 実在庫 - 帳簿在庫
この例では、棚卸差異は-30gです。
Excelの現在庫を3,920gへ直接書き換えるのではなく、在庫増減履歴へ次の1行を追加します。
stocktake -30g 月末棚卸
こうしておけば、差を合わせながら、「いつ、どれくらい在庫がずれたか」も残せます。
Excelで十分なのはどこまで?
Excelで困っていないなら、そのままで構いません。
一方、次のような作業が増えてきたら、Excelの使い方や管理方法を見直すタイミングです。
- 毎日の焙煎後に在庫を更新している
- 同じ生豆の仕入れロットが複数並行する
- 複数人で同じ表を更新する
- 焙煎記録と在庫表へ同じ使用量を二重入力している
- 原価表にも同じ仕入単価や投入量を入力している
- 棚卸差異の原因を追えない
- 「あと何日持つか」を毎回計算している
この段階で問題になるのは、Excelそのものではなく、同じ情報を別々の場所で管理することです。
入荷した量を在庫表へ、焙煎した量を焙煎記録と在庫表へ、仕入単価を在庫表と原価表へ入力する。表が増えるほど、転記の手間と入力漏れも増えていきます。
管理ツールを検討するときは、機能の多さよりも、仕入れロット・在庫増減・焙煎記録・原価を一度の入力でつなげられるかを確認します。
在庫管理の目的は「正しいkgを眺めること」ではない
在庫管理を始めたときに知りたいのは、まず「あと何kgある?」ということです。
しかし、記録がたまってくると、次の判断にも使えるようになります。
- あと何日持つ?
- いつ仕入れる?
- 次の販売予定には何kg必要?
- この豆はいくらで製品になった?
同じ8kgの在庫でも、1日100g使う豆と1日2kg使う豆では、仕入れの緊急度が違います。
直近の消費ペースが分かれば、次の計算で仕入判断につなげられます。
推定残日数 = 現在庫 ÷ 1日あたり平均使用量
登録不要で確認したい場合は、生豆在庫残日数計算ツールを使えます。販売予定から必要な生豆量を逆算したい場合は、生豆必要量計算ツールも利用できます。
まとめ — 袋を持ち上げれば分かっていた在庫が、分からなくなったら
最初は、袋を持ち上げればだいたい分かっていた生豆の在庫。
それが少しずつ分からなくなってきたのは、豆が増えたり、仕入れが重なったり、焙煎する回数が増えたりして、追いかける情報が増えてきたからです。
だから、最初から完璧な在庫管理を作る必要はありません。
まずは豆名と残量。
必要になったら仕入れロット。
さらに必要になったら、入荷・焙煎・棚卸の増減履歴。
今の現場で追えなくなってきたものから、一つずつ記録できる形にしていけば十分です。
Excelでの管理が複雑になってきたら
Excelで十分に管理できている間は、そのまま続けて構いません。
IRIDOMEでは、生豆と仕入れロットを分け、仕入れごとの価格・入荷量・残量と、焙煎時の使用ロット・在庫消費・歩留まり・原価をつなげて管理できます。
同じ情報を在庫表、焙煎記録、原価表へ何度も入力するようになったら、IRIDOMEも選択肢の一つです。