IRIDOME Guide
焙煎記録には何を残す?あとから比較できる記録項目と続け方
コーヒーの焙煎記録に何を残せばよいかを、再現性、品質評価、歩留まり・原価、ロット管理の目的別に整理。Excelで始める最小項目も紹介します。
公開日: 2026-08-21 最終更新日: 2026-08-21
焙煎記録を残そうと思っても、温度、時間、ハゼ、ガス、風量、味の評価など、記録できる項目はたくさんあります。
最初から全部を残そうとすると続きません。
大切なのは、あとから「前回と何が違ったか」を比較できることです。
この記事では、焙煎記録に何を残すと役立つかを、目的別に整理します。
まず残したい最小セット
ノートやExcelで始めるなら、まず次の項目があるだけでも比較しやすくなります。
| 項目 | 何が分かるか |
|---|---|
| 焙煎日 | いつ焙煎したか |
| 生豆・仕入れロット | 何を焙煎したか |
| 投入量 | どれだけ生豆を使ったか |
| 焙煎後重量 | 歩留まり・重量減少率 |
| 総焙煎時間 | 前回との進行差 |
| 主要イベント | 1ハゼ、排出などのタイミング |
| 焙煎度・仕上がり | 目指した結果 |
| 味・品質メモ | 実際の評価 |
| 次回変えること | 次の焙煎へつなぐ |
例えば、
焙煎日 2026-08-21
豆 Guatemala SHB
仕入れロット GTM-003
投入量 500g
焙煎後重量 418g
1ハゼ 8:42
DROP 10:35
評価 香りは良いが少し重い
次回 1ハゼ以降を少し短くする
くらいでも、次回の焙煎で見るべきポイントができます。
「温度を記録すること」と「焙煎記録を残すこと」は少し違う
Artisanなどの焙煎ソフトを使うと、BT / ET、RoR、イベント、ガス・風量など、多くのデータを記録できます。
これは非常に有用ですが、プロファイルファイルだけでは後から分かりにくい情報もあります。
例えば、
- どの仕入れロットを使ったか
- 投入量・焙煎後重量はいくつだったか
- 実際に飲んだ評価はどうだったか
- 欠点や選別量はどうだったか
- 次回何を変えようと考えたか
です。
そのため、
焙煎ソフト
→ 焙煎中に起きたことを詳しく記録
業務としての焙煎記録
→ その焙煎が何だったのか、結果はどうだったのかを残す
と分けて考えると整理しやすくなります。
Artisanのデータをどう保存・管理するかはArtisanの焙煎データをクラウドで管理する方法も参照してください。
目的1:同じ焙煎を再現したい
再現性を高めたい場合は、「前回の進行」を比較できる情報を残します。
基本
- 投入量
- 投入温度
- 総焙煎時間
- 1ハゼ開始時刻・温度
- 排出時刻・温度
- 焙煎後重量
取得できるなら
- BT / ET
- RoR
- ガス・ヒーター出力
- 風量
- ドラム回転数
- 主要な操作イベント
ただし、数値が同じなら必ず同じ味になるわけではありません。生豆の状態、室温・湿度、焙煎機の蓄熱状態なども影響します。
そのため、プロファイルだけでなく結果の評価もセットで残します。
目的2:おいしかった理由を探したい
焙煎条件だけではなく、飲んだ結果を残します。
例えば、
- 香り
- 酸味
- 甘さ
- 苦味
- ボディ
- 後味
- 欠点・違和感
- 総合評価
などです。
評価方法は自由ですが、毎回項目が変わると比較しづらくなります。
最初は、
総合評価: 4 / 5
良かった: 香り、甘さ
気になる: 後半に重さ
次回: 開発時間を少し短くする
のような簡単な形でも十分です。
重要なのは、評価を記録したあとに「次回どうするか」を1つ残すことです。
目的3:歩留まり・原価を見たい
販売する場合は、焙煎記録が原価管理にもつながります。
最低限、
- 使用した仕入れロット
- 生豆投入量
- 焙煎後重量
- 焙煎後の選別除去量
を残します。
例えば、
投入量 500g
焙煎後重量 418g
選別除去 8g
販売可能重量 410g
なら、
焙煎歩留まり = 418 ÷ 500 × 100 = 83.6%
実質歩留まり = 410 ÷ 500 × 100 = 82.0%
と計算できます。
詳しい考え方は焙煎の歩留まりとコーヒー豆100gの原価計算にまとめています。
目的4:生豆ロットまで追いたい
同じ銘柄でも、仕入れのたびに価格や状態は変わります。
Ethiopia Yirgacheffe
├─ LOT-001 1,900円/kg
└─ LOT-002 2,150円/kg
焙煎記録に「Ethiopia」とだけ書くより、実際に使った仕入れロットまで残しておくと、
- その焙煎に使った生豆単価
- どのロットから在庫が減ったか
- ロット切替前後で味が変わったか
を後から確認できます。
生豆マスターと仕入れロットの分け方は生豆在庫管理ガイドを参照してください。
Excel・スプレッドシートなら1行1焙煎から始める
最初は1回の焙煎を1行にすると扱いやすいです。
| roast_id | date | lot_id | input_g | roasted_g | first_crack | drop | rating | next_action |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| R-001 | 2026-08-21 | GTM-003 | 500 | 418 | 8:42 | 10:35 | 4 | 開発を少し短く |
| R-002 | 2026-08-22 | GTM-003 | 500 | 421 | 8:35 | 10:20 | 5 | この条件を基準にする |
温度の時系列データまでExcelへ手入力する必要はありません。
Artisan等でプロファイルを取っているなら、そのファイルや識別子と業務記録を紐づけるだけでも役立ちます。
比較するときは「同じ条件」を揃える
記録を増やしても、毎回違う条件を無作為に比べるだけでは判断しづらくなります。
まずは、
同じ生豆 / 同じ仕入れロット
↓
投入量を近づける
↓
変える条件を1〜2個に絞る
↓
結果を評価する
とすると違いを見つけやすくなります。
例えば「ガスを変え、投入量も変え、排出温度も変えた」場合、何が味へ影響したのか判断しづらくなります。
記録は集めること自体が目的ではなく、次の判断をしやすくするための材料です。
記録項目を増やすタイミング
最初から30項目を埋める必要はありません。
次のように、困りごとが出たときに追加していく方法があります。
| 困りごと | 追加する項目の例 |
|---|---|
| 前回と同じ焙煎にならない | 温度・イベント・操作条件 |
| 原価が合わない | 仕入れロット・投入量・焙煎後重量・選別量 |
| 味の違いを追えない | 評価項目・カッピングメモ |
| 複数人で条件がずれる | 担当者・焙煎機・テンプレート |
| 月次で集計したい | roast_id・商品・ロットなど識別子 |
使わない項目を記録し続けないことも、継続するためには重要です。
ノート・Excel・焙煎ソフト・専用ツールの使い分け
| 方法 | 向いている状態 |
|---|---|
| 紙のノート | まず数回記録して自分の項目を探したい |
| Excel / スプレッドシート | 自分で項目や集計方法を作りたい |
| Artisan等 | 温度・RoR・操作イベントを詳細に記録したい |
| 焙煎記録アプリ | スマホ中心で個人の焙煎を手軽に振り返りたい |
| 業務管理ツール | ロット・在庫・原価・複数の焙煎をつなげたい |
焙煎管理ソフト全体の選び方はコーヒー焙煎管理ソフトの選び方でも整理しています。
IRIDOMEの場合
IRIDOMEでは、焙煎記録を単体で保存するだけでなく、生豆・仕入れロット、投入量・焙煎後重量、歩留まり、在庫、原価とつなげて確認できるようにしています。
Artisan CSVを取り込んで焙煎データを扱うこともできます。
ただ、最初から専用ツールが必要なわけではありません。
まずノートやExcelで、
何を残すと次の焙煎に役立つか
を見つけるのでも十分です。
焙煎回数やロットが増え、同じ情報を複数の表へ転記したり、過去記録を探す時間が増えたときが、管理方法を見直すタイミングです。