IRIDOME Guide
コーヒー焙煎管理ソフトの選び方。用途別に整理
コーヒー焙煎管理ソフトを、焙煎中の計測、焙煎記録、生豆在庫、生産管理、原価管理の用途別に整理。Artisan、artisan.plus、Cropster、Excel、IRIDOMEの選び方を解説します。
公開日: 2026-08-21 最終更新日: 2026-08-21
コーヒー焙煎の管理ソフトを探すとき、最初に決めたいのは「どの製品が一番高機能か」ではなく、いま何を管理したいのかです。
焙煎中の温度やRoRを深く見たいのか、生豆在庫や生産計画までまとめたいのか、焙煎後のロット・歩留まり・原価を整理したいのかで、向いている選択肢は変わります。
この記事では、Artisan / artisan.plus、Cropster、スプレッドシート、IRIDOMEを例に、用途別の選び方を整理します。
※ 各サービスの機能は2026年8月時点の公式情報を確認しています。料金・提供範囲・対応機器等は変更される可能性があるため、導入時は必ず各公式サイトの最新情報を確認してください。
まず「焙煎管理」を5つの仕事に分ける
「焙煎管理ソフト」と一言で呼んでも、実際には複数の仕事が含まれています。
| 仕事 | 例 |
|---|---|
| 焙煎中の計測・制御 | 温度、RoR、イベント、ガス・風量、アラーム、自動化 |
| 焙煎記録・比較 | 過去プロファイル、条件、評価、次回改善点 |
| 生豆在庫 | 仕入れロット、入荷量、残量、仕入価格 |
| 生産管理 | 焙煎予定、担当者、焙煎機、必要量、進捗 |
| 原価・経営管理 | 歩留まり、使用ロット、商品原価、在庫差異 |
必要なのが最初の1つだけなら、高機能な業務システムを入れる必要はありません。逆に、複数の表やツールを毎回つなぎ直しているなら、管理範囲を広げる意味が出てきます。
Artisan:焙煎中の計測・分析・制御を深く扱いたい
Artisanはオープンソースのコーヒー焙煎ソフトウェアです。
公式ドキュメントでは、温度・RoRの記録、背景プロファイルとの比較、イベント記録、アラーム、PID、機器制御、プロファイル再生など、焙煎中の計測・分析・自動化を幅広く扱っています。2026年のArtisan v4ではStandard / Expert / ProductionのUIモードも導入されています。
特に次のような場合に候補になります。
- 焙煎中の温度曲線やRoRを細かく確認したい
- 過去プロファイルと比較しながら焙煎したい
- 対応センサーや焙煎機を柔軟に組み合わせたい
- アラーム・制御・自動化まで設定したい
- ローカル環境でも焙煎を続けたい
Artisanを「焙煎ログを取るだけのソフト」と考えるのは現在では正確ではありません。公式サイトでは焙煎制御・自動化まで扱っています。
artisan.plus:Artisanと在庫・計画を同じ流れに乗せたい
Artisanを使っていて、生豆在庫や生産計画まで広げたい場合は、まずartisan.plusを確認するのが自然です。
2026年8月時点の公式ドキュメントでは、artisan.plusで次のような仕事を扱えます。
- 複数の保管場所と生豆在庫
- 仕入れ・移動・販売・棚卸調整などの在庫取引
- 焙煎時の生豆在庫の減算
- ブレンド
- 複数の焙煎機・担当者・保管場所を含む焙煎スケジュール
- 焙煎実績・生産チャート
- RoastGuardによる品質確認
- レポート
Artisan側のSchedulerとartisan.plusの計画は連携し、予定した焙煎の実行や進捗の反映も行えます。
そのため、Artisanを使い続けながら同じエコシステムで在庫・生産まで管理したいなら有力な選択肢です。
Artisanのデータをクラウド側でどう扱うかは、Artisanの焙煎データをクラウドで管理する方法でも整理しています。
Cropster:ロースタリー全体を広く統合したい
Cropsterは、焙煎だけでなくロースタリーの複数業務をつなぐプラットフォームです。
2026年8月時点の公式サイトでは、焙煎・QCに加えて、生豆やその他資材の在庫、契約・コスト、製造計画、トレーサビリティ、複数チーム・拠点での運用などを一つのプラットフォームで扱う方向性を示しています。
※ 契約・コスト、包装資材などの管理を含む一部機能は、契約プランやAdd-onによって利用できる範囲が異なります。導入時は必要な機能が契約範囲に含まれるか公式情報で確認してください。
次のような状況では候補になりやすいでしょう。
- 複数人・複数焙煎機で製造している
- 在庫、焙煎、QC、生産予定を一つの流れにしたい
- 生豆だけでなく包装資材等も含めて在庫を把握したい
- 需要と在庫を見ながら製造計画を立てたい
- 拠点やチームをまたいだ運用が必要
機能範囲が広いぶん、「必要な仕事に対して導入範囲が合っているか」を確認して選ぶことが重要です。
Artisan / artisan.plusとの違いをより具体的に見たい場合は、ArtisanとCropsterの違いを参照してください。
Excel・Googleスプレッドシート:まず運用を作りたい
必要な管理項目が少ないうちは、ExcelやGoogleスプレッドシートでも十分です。
例えば、
焙煎記録
- 焙煎日
- 生豆 / ロット
- 投入量
- 焙煎後重量
- 焙煎時間
- メモ
生豆在庫
- ロット
- 入荷日
- 仕入単価
- 入荷量
- 残量
くらいから始められます。
スプレッドシートの強みは、初期費用がほぼなく、自分の運用に合わせて項目を変えられることです。
一方で、
- 焙煎記録と在庫表を別々に更新する
- 同じ仕入単価を原価表へ転記する
- 誰かがセルを上書きして履歴が分からなくなる
- ロットや焙煎回数が増えるほど集計が重くなる
といった状態になったら、専用ツールを検討するタイミングです。
生豆在庫をExcelで始める方法は生豆在庫管理ガイドにまとめています。
焙煎記録アプリ:個人の記録・再現を重視したい
日本語で使える焙煎記録アプリも増えています。
スマートフォンで焙煎日時、ハゼ、温度、写真、評価などを記録できるタイプは、ノートより入力しやすく、個人の焙煎を振り返る用途では使いやすい選択肢です。
ただし、アプリごとに在庫・ロット・複数人運用・原価・外部データ取込などの対応範囲は異なります。
「自分の焙煎を記録したい」のか「事業として在庫・原価までつなぎたい」のかを先に分けると選びやすくなります。
何を記録すればよいかは焙煎記録には何を残す?で整理しています。
IRIDOME:焙煎後の記録・在庫・原価を軽くつなげたい
IRIDOMEは、コーヒーロースター向けの焙煎・在庫・原価管理ツールです。
Artisanのような焙煎機制御ソフトを置き換えることや、Cropsterのようにロースタリー全体を広範囲に統合することを目的にはしていません。
現在の中心は、次の流れをつなげることです。
生豆・仕入れロット
↓
焙煎記録
↓
投入量 / 焙煎後重量
↓
歩留まり
↓
生豆在庫
↓
原価
Artisan CSVの取込にも対応しているため、Artisanで焙煎データを記録しながら、焙煎後の在庫・ロット・原価を別の視点で管理したい場合に検討できます。
用途別に選ぶとこうなる
| いちばん解決したい仕事 | まず確認したい選択肢 |
|---|---|
| 焙煎中の温度・RoR・制御 | Artisan |
| Artisanを使いながら在庫・生産計画も扱う | artisan.plus |
| 在庫・QC・製造を広く統合する | Cropster |
| まず自分の運用を小さく作る | Excel / Googleスプレッドシート |
| 個人の焙煎記録・振り返り | 焙煎記録アプリ |
| 焙煎記録と生豆ロット・在庫・歩留まり・原価をつなぐ | IRIDOME |
この表は「優劣」ではなく、最初に見る候補を絞るための整理です。
選ぶ前に確認したい7項目
候補が決まったら、機能一覧だけでなく実際の運用で確認します。
- いま一番時間がかかっている作業を減らせるか
- 現在使っている焙煎機・センサーに対応するか
- 過去データを移行・取込できるか
- 複数人で使う必要があるか
- 在庫・原価・QCのどこまで一緒に管理したいか
- データを書き出せるか
- 料金だけでなく、日々の入力作業が現実的か
高機能でも入力が続かなければ使えません。逆に、最初はExcelでも必要な情報がきちんと残るなら、それで十分な場合もあります。
製品名から選ぶより、「今いちばん手作業になっている仕事は何か」から選ぶのがおすすめです。